塩梅(あんばい)の意味とは?どう使えばいい

「塩梅(あんばい)」という言葉を時々読んだり聞いたりしますが、意味はわかりますか?
なんとなくわかっている感じはしますが、なぜ「塩」と「梅」なのか、不思議な言葉ですね。

しかも、「あんばい」と打って変換される漢字は、「按配」「案配」などいくつかあります。
そんな「塩梅」を、ここで「いい塩梅」に理解してもらえるといいなと思います。

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塩梅「あんばい」の意味とは

ぐあいや様子、加減のことをいい、いろいろな事に使えます

料理の味加減、身体のぐあい、天気の様子、仕事の状況など、もの事全般にて対してその様子や状況のことを指します。

また、「塩梅する」と動詞で使うと、「調度よいように考えて、手配したり整えたりする」という意味になります。
三杯酢(さんばいず)など、塩やだしで味を調えた酢のことを、「塩梅酢(あんばいず)」といいます。

「塩梅」は、元々は「えんばい」と読まれていました

最初は文字通り、塩と、酢として使われていた梅酢を合わせた調味料のことでした。

それで塩と梅酢のバランスを整えることを「塩梅する」と言っていましたが、料理の味加減全般のことを言うようになりました。

また、五つの味、“甘い”“塩辛い”“苦い”“酸っぱい”“辛い”のの中で、特に基本となるのが“塩”と“酸”であることから、味加減のことを「塩梅」というようになったともいいます。

「えんばい」が「あんばい」になったのは室町の頃です
物事を適切に処理したり整えたりするという意味の「按排(あんばい)」と、音と意味が良く似ていることから混同されるようになり、「塩梅」も「あんばい」とよむようになったようです。

日本古来の雅楽では、篳篥(ひちりき)という楽器に「塩梅」という奏法がありますが、読み方は「あんばい」ではなく「えんばい」のままです。
同じ孔のまま、息の量や唇の位置を加減して音程に幅を持たせる奏法です。

 

「塩梅」は地方によって方言がある

最近は聞きなれない「あんばい」、方言だと思われがちです。

「あんばい」が、訛(なま)って「やんばい」になったり、「あんべい」になったり、「あんべ」になったりするようですが、みんな「塩梅」です。

「いーやんばいだね。」
「えーあんべいだ。」
「いーあんべだよ。」

どれも、方言というよりは、「良い塩梅だ。」が訛ったものです。

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「塩梅」「按配」「案配」「案排」と違いはあるの?

どれも同じ意味で、使い方も一緒です。
「按排」は、「按配」「案配」「案排」とも書きます。
他にもいろいろな書き方があります。

「塩梅」と「按排」がいっしょになって、「按梅」と書かれた例もあるようです。
もっとも多く使われているのは、「塩梅」です。
現代中国語では「手配すると」いう意味で、「安排」と書くそうです。

でも、料理の味について言うときは、「塩梅」が一番しっくりしますね。

 

使える塩梅の例文を紹介

「今年の味噌は、いい塩梅にできた。」
「この塩梅だとうまくいきそうだ。」
こんな表現なら、もしかすると時々耳にするかもしれません。
でも、「塩梅」の用例は、実に多種多様です。
著名な作品から、「塩梅」を使っている例を見てみましょう

 

料理の味加減

その日に食べたものや作ったものをただ書き並べておくだけのことで、気が向けば、調味料の塩梅や台所での新しい思いつきを書き添えたりもする。
平松洋子『アジア おいしい話』。

材料の悪いのは、名料理人の手でいかに塩梅しましても、よい料理とはならないのです。
北大路魯山人『料理する心』

身体の具合

膝の関節が痛むときにも使用したところ、これまたすごくいい塩梅である。
姫野カオルコ『初体験物語』
どんな塩梅だときいてみると、爺やの話ではよくわかりませんが、どうも胃癌らしい。
堀辰雄『朴の咲く頃』

天気の様子

今夜の塩梅じゃどうせ明日は降りだ、夜が明けたら皆で飲んでくんな、いいか。
小栗風葉『世間師』

物事の具合

ただいい塩梅に、兄貴はそれをとうとう見ないですんだんです。
尾上松緑『松緑芸話』

状況

まるでこの周辺の山からアオシンがいっせいに消えてしまったような塩梅だった。
熊谷達也『邂逅(かいこう)の森』
いい塩梅に、彼が乗り込むと間髪をいれずに車はプラットフォームを離れた。
谷崎潤一郎『潤一郎犯罪小説集』

整える、手配する

そろそろ回しながらまずこの団塊の重心がちょうど回転軸の上に来るように塩梅するらしい。
寺田虎彦『空想日録』
少年の家出に何か自分が関係していることを敏感に直覚して、少年に行き会うよう時間を塩梅したのであろう。
きだ・みのる『道徳を否む者』

数ある文豪も皆さんよく使われる言葉ですね。

 


 

 

少し前までは、年配の人どうしが「いい塩梅だね」と挨拶していましたが、私が年を重ねてみれば、こう挨拶する人は周りにいなくなりました。
若い人では「あんばい」と聞いて、「塩梅」や「按排」の字を思い浮かべる人も、少ないのではないでしょうか。
おそらく日常的にはあまり使われなくなった言葉なのでしょう。

でも、著名な近現代文学でもよく使われている言葉です。
教養としては、知っておいた方がいいと思います。
「塩梅」の読みかた、などは、いかにも教養試験に出そうですよね。

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