特に夏によく見られる積乱雲、夏の暑さがそのでき方に関係しているようですね。
局地的に起こるゲリラ豪雨や、災害の危険のある集中豪雨も、この積乱雲がもたらすものです。
ここでは、どんな時にどのように積乱雲ができるのか、詳しくみていきます。
積乱雲が発達しているときに注意しなければならないこともチェックしておきましょう。
積乱雲のできるメカニズムは?
積乱雲は、もくもくと上方向へ高く湧きあがった雲が成層圏(せいそうけん)の下にまで達したものです。
気象情報で、「大気の状態が不安定」という言葉をよくききますが、それは、上空が冷たい空気に覆われ、地表近くの空気が温かい状態のことをいいます。
「大気の状態が不安定」で、さらに湿度が高いときが、積乱雲ができやすいときです。
夏の暑い日には、地上で温められた空気は軽くて上へ昇っていきます。
それが上空で冷たい空気に触れると水や氷の粒ができて積雲(せきうん)になります。
温かい空気はどんどん上へ昇っていくので、雲も上方向へ発達していきます。
空気が上へ昇っていく流れを、上昇流といいます。
積雲は上方向へ高く発達していきますが、これ以上は上へ行けないよ、という限界があります。
成層圏の下、大体1万mくらいで、対流圏界面(たいりゅうけんかいめん)といいます。
対流圏界面に達した雲は、積乱雲となり、横方向へも広がっていきます。
雲の中では、氷の粒どうしがぶつかり合って大きくなります。
ぶつかり合うことで静電気が発生します。
大きくなった氷の粒は下に落ちて、地上で雹(ひょう)となって降ってきます。
氷の粒が途中で溶けると、地上では雨になります。
雨がきっかけで、雲の中の静電気が地表へ雷となって落ちてきます。
地上に雨が降り注ぐとき、空気の流れは下降流となり、冷たい空気がおりてきます。
地表に達した下降流は、また地表近くの暖かい空気に出会います。
そしてその温かい空気がまた上へ押し上げられ、あらたに積雲を形成するのです。
まさに、エンドレスなのですね。
積乱雲には要注意 雷や雨は強い?
青い空に湧きあがる雲は夏の風物詩のひとつですが、すぐ上空で発達した積乱雲は要注意です。
特に山の中では雷を避けることが難しいので、積乱雲を見たら、すぐ山小屋などに避難しましょう。
積乱雲は湿った空気が成長したものなので、大量の水分を含んでいます。
大粒の雨、激しい雷をともないます。
時には台風のような突風をともなうこともあるので油断しないでください。
積乱雲は、大雨のサインといってもよいでしょう。
綿菓子のような積雲がどんどん鉛直方向(地表から真上へ向かって)へ成長するようなら、上空に冷たい空気があって大気が不安定な証拠です。
天気の急変が考えられます。
雲の状態をいつも観察しておけるといいですね。
積乱雲・入道雲・乱層雲の違いはあるの?
夏の季語にもなっている入道雲や、積乱雲、これは同じ雲を指します。
入道とは、「仏の道に入る」という仏教用語で、お坊さんのことをいいました。
積乱雲のモクモクした形がお坊さんの頭のようなので、入道雲と呼ぶようになったそうです。
ですから、雹や大雨を降らすまでに成長した積乱雲は、もう入道雲とは呼べないのでしょうね。
乱層雲は、低いところにできる灰色の雲で、しとしとと長く雨を降らせます。
縦方向に長くなって、短時間に大雨を降らせる積乱雲とはまったく違う雲です。
積乱雲が発生しやすい場所はあるの?
積乱雲は、上空と低空の温度差が大きいところに発生しますが、条件がそろう可能性は、どこにでもあります。
最近は、エアコンの室外機の放熱などによるヒートアイランド現象も手伝って、都市部に発生することも多くなりました。
都市部でゲリラ豪雨が多く発生するのもそのためです。
また、最近の豪雨災害では、積乱雲が同じ場所で次々とできて一列に並ぶバックビルディング現象が報告されています。
これも、その時の気象条件によって、どこででも起こり得ることのようです。
入道雲とも呼ばれる積乱雲は、夏らしさを感じさせるものですが、急激な天気の変化を起こす危険な雲です。
「大気の状態が不安定」な時は、雲の様子に気をつけて行動できるといいですね。
積乱雲は、遠くからみると白い雲ですが、真下から見ると黒く暗い雲になります。
積乱雲を見たら、予定を切り上げるなどの対策をしてください。
外出中に積乱雲のもたらすゲリラ豪雨に遭遇すると、交通機関も止まってしまうこともあります。
また、高い山で積乱雲の中に入ってしまうと、ガスに覆われて視界がない中、大粒の雨と上からも横からも襲ってくる雷で非常に危険な状態になります。
登山の際は雲の変化に常に気を配っておきましょう。
特に夏は、夕方にゲリラ豪雨が発生することが多くなります。
急に空が暗くなったり、雷の音が聞こえてきたら、無理をせずに、雨宿りをする場所を探されることをお勧めします。